面倒なことを先送りにしがちな私の性質を物語る一冊の本がある。もう、借りてゆうに10年はたつある本。借りた相手は職場の人で、その人が転勤するときに返しそびれてしまったままだ。その人は現代美術の作品を発表したりしており、私も美術には興味があるという話をしたときに、貸してくれた。
その本は、中原佑介「見ることの神話」(フィルムアート社)。何故さっさと返さなかったかというと、読めなかったから。読もうとすると、うち、アホやさかい...、とへらへら笑ってごまかしたくなるような、難しい美術評論本である。なら、すぐ返せばいいようなものだが、せっかく貸してくれた本を読まないで返すということができなかった。最初は感想を一言述べられるくらいは読もう、という気持ちだったが、これだけ長く借りていると、完全に読んで便箋2枚くらいの文章を添えて返さないと申し訳ない、とハードルがあがってしまっている。
でもこの本を返していないことがこの10年ずっと気がかりだった。このままではまずい、と再度手にとって読み始めているが、やっぱり難解で理解できない部分が多い。だが、それよりも、随所にある傍線や細かい書き込みに、この本がいかに持ち主にとって重要な本であるかを再認させられた。検索してみると、やはり今は買えない。この本。まずい。しかし、どうやって、返す?
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